それを許さないのは女の罪
太宰中期の告白体と私小説中心の短編集。中期の太宰は安定した時期で攻撃性や破滅的なところは少ないと言われているけどけどそのぶん、彼の能力があますところなく発揮されてて好きな作品が多い。これも本一冊を通して好きだった。
畜犬談は本当に電車でニヤニヤするくらい可笑しくて、こんな文書ける作家はほかにないと思うし、女の告白体のは集の題にもなったきりぎりすとか女の浅ましさが印象に残る。一冊本読んだだけでこんなに女怖い嫌だって言ってる女もそんなにいないかな。っていうかほかにいないでしょうか。普通でいたいな。なんてね。
本の最後に収録された水仙と日の出前は太宰作品には割と少ない本格的な現代文学らしい話で、とても怖い小説。人間の心の深いところに迫って、教科書に出てた安部公房のとは違うけど、それに近いような遠いような、とりあえず怖い。でも面白い。引き込まれる。
彼の作品は口語調で読みやすいからさくさく読める。太宰作品は青空文庫でかなり読めるのであまり読んだ事のない人は一読すると良かろう。なんてえらそうに。